疾患情報DISEASE INFORMATION

消化管がん治療

写真 胃がんの内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)の一例

 

 

公立昭和病院の先端医療

最先端の消化管がん治療
―――内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)

消化器内科 浦牛原 幸治 医長

 

 

早く見つかれば、
お腹も消化管も切らずに治ります!

 

 内視鏡は口や肛門などから細い管状のカメラを挿入し、消化管の内部を観察する機器です。この機器を使って消化管がんを診断する技術、切除する方法はここ10年で大きく進歩しました。
 
 まず、転移を起こさず発生部位周囲にとどまる早期がん、つまり局所切除すれば治る早期がんの性質が明らかになり、どういう早期がんは内視鏡切除で治るのかが分かってきました。当院では画像強調内視鏡、拡大内視鏡、超音波内視鏡など最先端の機器を使って、このような早期がんを正確に診断し患者さんにとって最も体の負担が少なく、かつ確実な治療法を選択しています。また内視鏡的粘膜下層剥離術(endoscopic submucosalDissection:ESD)という最新治療では、面積の大きなものや粘膜下層に浅く浸潤するがんも確実に切除できます(写真)。当院では2004年よりESDを導入し、これまで食道表在がん、早期胃がん、大腸腫瘍に対し良好な治療成績を得ています。
 
 ESDはリンパ節転移のないと考えられる消化管がんに対し、内視鏡を使ってがんのできた消化管粘膜を剥離切除することによって、がんを摘出する方法です(図)。消化管の中からの治療なのでお腹を切らないため、体の負担は最も軽い手術と言えるでしょう。当院では2014年は140人の患者さんにESD治療を行いました。
 
 消化管がんは初期には症状が出ません。よって早期診断するためには飲食や喫煙の習慣がある人は食道がんのリスク、胃にピロリ菌がいる人は胃がんのリスクがあることを知り、定期的に内視鏡検査を受ける必要があります。大腸がんを早期発見するためには、毎年、大腸がん検診(便潜血検査)を受け、陽性の場合は内視鏡検査やCTを使った仮想大腸内視鏡検査(CTC)を受けてください。消化管がんは早期に見つかれば、お腹を切らずとも治る時代が来ました。
 
 当院消化器内科では近隣の内視鏡医とも協力連携体制を確立し、地域の皆さんに早期消化管がんの精度の高い診断、内視鏡治療を自信を持って提供しており、また日々研鑽を積んでいます。詳細については遠慮なくご相談ください。

図 内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)

 

〔ページ上部の写真説明〕
①お酢と青い色素液を胃の粘膜にかけると胃がんの領域は色素をはじきます。その外側に切除する範囲の目印となるマークを付けます
②胃の壁を傷つけないようにがんの周囲を切開しました。がんの下には内視鏡を潜り込ませて、胃の壁から胃がんをはがし取ります
③胃の壁を傷つけることなく、がんをはがし取ったあとです。取れたものは口から回収します
④このはがし取った粘膜を2mm間隔で顕微鏡により詳細に検査し、がんが取りきれているかどうか、治っているかどうかを判定します

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