○公立昭和病院放射線障害予防規程
令和元年8月27日
訓令第1号
公立昭和病院放射線障害予防規程(平成18年訓令第2号)の全部を改正する。
第1章 総則
(目的)
第1条 この規程は、放射性同位元素等による放射線障害の防止に関する法律(昭和32年法律第167号。以下「法」という。)における診療用高エネルギー放射線発生装置(以下「放射線発生装置」という。)の取扱い及び管理に関する事項を定め、放射線障害の発生を防止し、あわせて公共の安全を確保することを目的とする。
(適用範囲)
第2条 この規程は、当病院のリニアック室に立ち入るすべての者に適用する。ただし、診療を受けるために立ち入る患者とその介助者を除く。
(用語の定義)
第3条 この規程において用いる用語の定義は、次のとおりとする。
(1) 「放射線取扱主任者(以下「主任者」)」とは、放射線障害発生の防止について総括的な監督を行う者をいう。
(2) 「放射線使用責任者(以下「使用責任者」)」とは、放射線科科長をもって充て、当該施設の管理業務を総括する者をいう。
(3) 「放射線業務従事者(以下「業務従事者」)」とは、リニアック室に立入り診療を行う者をいう。
(4) 「放射線業務従事責任者(以下「業務従事責任者」)」とは、業務従事者に対し放射線発生装置の取扱いについて適切な指示を与えるとともに、使用等に関する記帳を行う者をいう。
(5) 「放射線施設一時立入者(以下「一時立入者」)」とは、放射線発生装置の取扱い、修理、清掃又はこれに付随する業務に従事するためにリニアック室に立ち入る者を使用責任者が指定した者をいう。
(6) 「放射線施設見学者(以下「見学者」)」とは、リニアック室に入室する者で上記項目(1)から(5)以外の者をいう。
(7) 「放射化物」とは、放射線発生装置の修理や廃棄、更新時に発生するターゲット及びターゲット周辺部品をいう。放射化物は保管せず、速やかに廃棄する。
(遵守等の義務)
第4条 業務従事者及び一時立入者は、業務従事責任者が放射線障害防止のために行う指示を遵守し、その指示に従わなければならない。
2 院長は、主任者が法及びこの規程に基づき行う意見を尊重し対応しなければならない。
3 院長は、放射線安全委員会がこの規程に基づき行う答申又は意見を尊重し対応しなければならない。
第2章 職務及び組織
(組織)
第5条 放射線発生装置の取扱いに従事する者並びに安全管理に従事する者に関する組織は、図1のとおりとする。
図1
(1) 放射線安全委員会
放射線障害防止について必要な事項を企画審議するために、放射線安全委員会を置く。
2 委員長は、院長が任命する。
3 委員は、主任者、使用責任者その他の職員の中から放射線安全委員長が任命する。
4 委員会の運営については、別に定める放射線安全委員会運営要綱によるものとする。
(2) 医療安全管理委員会
医療事故等を防止し、安全管理体制の確保及び推進を目的として、必要な事項を定めた公立昭和病院医療安全管理委員会設置要綱に基づき設置する。
(職務)
(1) 放射線取扱主任者
院長は、放射線障害発生の防止について総括的な監督を行わせるため、第一種放射線取扱主任者免状所有者又は医師の中から主任者を任命しなければならない。
2 主任者は、放射線科部長が推薦し院長が任命する。
3 院長は、主任者に登録定期講習機関が行う定期講習を主任者の任命後は、1年以内、その後は各3年以内に受講させなければならない。ただし、主任者が任命前1年以内に定期講習を受講していた場合には、当該講習の受講後3年以内に、その後は各3年以内に受講させなければならない。
4 主任者は、放射線障害の発生の防止に係る監督に関し、次の各号に掲げる職務を行う。
(ア) 予防規程の制定及び改廃への参画
(イ) 放射線障害防止上重要な計画作成への参画
(ウ) 法令に基づく申請、届出、報告の審査
(エ) 異常及び事故の原因調査への参画
(オ) 院長に対する意見の具申
(カ) 使用状況等及び施設、帳簿、書類等の監査
(キ) 関係者への助言、勧告及び指示
(ク) 放射線安全委員会の開催の要求
(ケ) 放射線障害のおそれ又は放射線障害が発生した場合の措置
(コ) 緊急作業が必要な場合の作業者の選任
(サ) 業務改善のための検討会の実施
(2) 放射線使用責任者
使用責任者は次の各号に掲げる職務を行う。
(ア) 一時立入者の指定
(イ) 放射線施設責任者との連携
(ウ) 放射線健康管理責任者との連携
(エ) 業務従事者、及び業務従事責任者の任命と主任者への報告
(オ) 教育及び訓練の実施とその記録の管理
(カ) 教育及び訓練の省略の判断とその記録の管理
(キ) 業務改善のための検討会の報告
(ク) 記帳及び保存の管理
(ケ) 夜間や休日に起きた火災時の通報
(3) 放射線業務従事責任者
業務従事責任者は、放射線治療技師の中から使用責任者が任命し、主任者に報告する。
業務従事責任者は、次の各号に掲げる職務を行う。
(ア) リニアック及び管理区域の点検と主任者への報告
(イ) 放射線障害のおそれのある場所についての放射線量の測定と主任者への報告
(ウ) 教育及び訓練の企画、立案
(エ) 放射線測定機器の保守管理
(オ) 業務従事者、一時立入者及び見学者への放射線障害防止の指示
(カ) 記帳及び保存の実施
(キ) 災害時の点検、報告
(ク) 火災時の通報
(4) 放射線施設責任者
放射線施設責任者は業務課長とする。
使用責任者と連携し放射線施設の維持及び管理に努める。
(5) 放射線健康管理責任者
放射線健康管理責任者は、人事課長とする。
放射線健康管理責任者は、使用責任者と連携し、次の各号に掲げる職務を行う。
(ア) 個人被ばく線量の測定と記録保存
(イ) 健康診断の施行と記録保存
(ウ) 放射線障害を受けた者等に対する保健上必要な措置
(エ) 異常時の報告
(6) 放射線業務従事者
放射線業務従事者は、使用責任者が任命し、主任者に報告する。
(7) 主任者の代理者
主任者が旅行、疾病その他の事故によりその職務を行うことができない場合は、放射線科部長が第一種放射線取扱主任者免状所有者又は医師の中から主任者の代理者(以下「代理者」という)を任命する。
代理者は、主任者の業務及び責務をすべて引き継ぐ。
代理者の解任も、放射線科部長が行う。
主任者が30日以上職務を行えない場合は、放射線科部長が原子力規制委員会に代理者の選任の届け出をし、解任をした場合は、解任の届け出をしなければならない。
第3章 施設の維持及び管理
(施設の維持及び管理)
第6条 業務従事責任者は、年2回、リニアック及び管理区域の点検を行い主任者に報告する。
2 異常があった場合、使用責任者に報告し放射線施設責任者と連携し速やかに対応する。
3 改善結果を主任者に報告する。
4 施設点検項目は、「リニアック施設点検記録」の項目に従って行う。
第4章 測定
(場所の測定)
第7条 業務従事責任者は、放射線健康管理担当者に放射線発生装置使用による放射線障害のおそれのある場所について、放射線の量の測定を行わせ、その結果を記録させなければならない。
2 測定の場所は、使用施設境界、病室等居住区域及び当院の事業所境界等について行うこと。
3 測定の時期は取扱開始前に1回、取扱開始後にあっては、6ヵ月を超えない期間ごとに1回行うこと。
4 次の項目について測定結果をそのつど記録し、5年間保存すること。
(ア) 測定日時
(イ) 測定箇所
(ウ) 測定者の氏名
(エ) 放射線測定器の種類及び形式
(オ) 測定方法
(カ) 測定結果
5 測定の結果について、主任者に報告すること。
(個人被ばく線量の測定)
第8条 放射線健康管理責任者は、管理区域に立ち入る者に対して適切な個人被ばく線量計を着用させ次の各号に従い個人被ばく線量を測定しなければならない。
2 放射線の量の測定は、外部被ばくによる線量について行うこと。
3 測定は、胸部(女子にあっては腹部)について1センチメートル線量当量及び70マイクロメートル線量当量について行うこと。
4 前号のほか頭部及び頸部から成る部分、胸部及び上腕部から成る部分並びに腹部及び大腿部から成る部分のうち、外部被ばくが最大となるおそれのある部分が、胸部及び上腕部から成る部分(前号において腹部について測定することとされる女子にあっては腹部及び大腿部から成る部分)以外の部分である場合は当該部分についても行うこと。
6 測定は、管理区域に立ち入る者について、管理区域に立ち入っている間継続して行うこと。
7 次の項目について測定の結果を記録すること。
(ア) 測定対象者の氏名
(イ) 測定者の氏名
(ウ) 放射線測定器の種類及び形式
(エ) 測定日時
(オ) 測定方法
(カ) 測定部位及び測定結果
8 前項の測定結果について4月1日、7月1日、10月1日及び1月1日を始期とする各3ヶ月間、4月1日を始期とする1年間並びに女子(妊娠の可能性のない者を除く)にあっては毎月1日を始期とする1ヶ月間について、当該期間ごとに行い記録すること。
9 前項の測定結果から実効線量及び等価線量を算定し次の項目について記録すること。
(ア) 算定年月日
(イ) 対象者の氏名
(ウ) 算定者の氏名
(エ) 算定対象期間
(オ) 実効線量
(カ) 等価線量及び組織名
10 前項の算定は4月1日、7月1日、10月1日及び1月1日を始期とする各3ヶ月間、4月1日を始期とする1年間並びに女子(妊娠の可能性のない者を除く)にあっては毎月1日を始期とする1ヶ月間について、当該期間ごとに行い記録すること。
第5章 教育及び訓練
(教育及び訓練)
第9条 使用責任者は、放射線発生装置に立ち入る者に対し、この規程の周知等を図るほか、放射線障害の発生を防止するために必要な教育及び訓練を実施しなければならない。
2 教育及び訓練の企画、立案は、別に定める放射線業務に関する教育及び訓練実施要綱に従い業務従事責任者が行う。
3 教育及び訓練は、次の各号に掲げる区分に応じて行う。
(ア) 業務従事者
(イ) 一時立入者
4 実施時期は、次のとおりとする。
(ア) 業務従事者として登録する前 (前項(ア)に規定する者に限る。)
(イ) 管理区域に立ち入った後又は取扱等業務の開始後にあっては前回の教育及び訓練を行った日に属する年度の翌年度の開始の日から1年以内
5 第3項(ア)については、次に挙げる項目及び時間数について実施すること。
(ア) 放射線の人体に与える影響 30分以上
(イ) 放射性同位元素等又は放射線発生装置の安全取扱い 1時間以上
(ウ) 放射線障害防止に関する法令及び放射線障害予防規程 30分以上
6 第3項(イ)については、次に挙げる項目及び時間数について実施すること。
(ア) 放射線の人体に与える影響 30分以上
(イ) 放射線障害防止に関する法令 30分以上
(ウ) 放射線障害予防規程 30分以上
(エ) その他放射線障害防止に関して必要な事項
7 使用責任者は、教育及び訓練の実施について、実施年月日、項目、教育及び訓練を受けた者の氏名を記録しなければならない。
(教育及び訓練の省略)
第10条 教育及び訓練は、受ける者の十分な知識、経験及び技能、院外で受けた教育訓練の内容を確認すれば、使用責任者の判断で第5、6項における項目や時間数を省略、又は短縮することができる。その詳細は放射線業務に関する教育及び訓練実施要綱に従う。
第6章 健康診断
(健康診断)
第11条 放射線業務従事者の健康診断に関する責任者は、放射線健康管理責任者とする。
2 健康診断は、問診及び検査とし、それぞれ次に掲げる事項とし、問診は放射線科治療医師が行う。
(ア) 放射線の被ばく歴の有無
(イ) 被ばく歴を有する者については、作業の場所、内容、期間、線量、放射線障害の有無、その他放射線による被ばくの状況
(ウ) 末しょう血液中の血色素量又はヘマトクリット値、赤血球数及び白血球数及び白血球百分率
(エ) 皮膚
(オ) 眼
(カ) その他原子力規制委員会が定める部位及び項目
3 健康診断の実施時期は、次のとおりとする。
(ア) 業務従事者として登録する前
(イ) 管理区域に立ち入った後は、6ヶ月以内ごとに1回
4 前項の規定にかかわらず、業務従事者が実効線量限度又は等価線量限度を超えて放射線に被ばくし、又は被ばくしたおそれのある場合は、遅滞なくその者につき健康診断を行わなければならない。
5 放射線健康管理責任者は、次の各号に従い健康診断の結果を記録しなければならない。
(ア) 実施年月日
(イ) 対象者の氏名
(ウ) 健康診断を実施した医師名
(エ) 健康診断の結果
(オ) 健康診断の結果に基づいて講じた措置
6 健康診断の結果は、定められた場所に永久保存するとともに、実施のつど記録の写しを本人に交付しなければならない。
7 健康診断の結果の記録は、受診者が事業所の従業者でなくなった場合又は当該記録を5年以上保管した場合において、これを原子力規制委員会が指定する機関に引き渡すことができる。
第7章 保健上必要な措置
(放射線障害を受けた者等に対する措置)
第12条 放射線障害を受けた者又は受けたおそれのある者に対する保健上必要な措置を講じる責任者は、放射線健康管理責任者とする。
2 放射線健康管理責任者は、健康診断を行った医師及び主任者の意見に基づいて、放射線障害を受けた者又は受けたおそれのある者に対し、その程度に応じ、取扱時間の短縮、立入りの禁止、配置転換等健康の保持等に必要な措置を講じなければならない。
3 放射線健康管理責任者は、講じた措置を放射線安全委員会に報告しなければならない。
4 放射線業務従事者以外の者が放射線障害を受け、又は受けたおそれのある場合は、遅滞なく、医師による診断、必要な保健指導等の適切な措置を講じなければならない。
第8章 記帳及び保存
(記帳・保存)
第13条 記帳及び保存に関する責任者は、使用責任者とする。
2 使用責任者は、下記のそれぞれの項目を含む帳簿又は記録を作成し、毎年3月31日に閉鎖し、帳簿又は記録を閉じてからそれぞれ5年間保存しなければならない。
3 電磁的方法により記録され、当該記録が必要に応じ電子計算機その他の機器を用いて直ちに表示されることができるようにして保存されるときは、当該記録の保存をもって帳簿の保存に代えることができる。
(ア) 放射線発生装置の使用に係る記録
(i) 放射線発生装置の種類
(ii) 放射線発生装置の使用年月日、目的、方法、場所及び使用線量
(iii) 放射線発生装置の使用に従事する者の氏名
(イ) 放射線施設の点検に係る記録
第6条4項に準ずる記録
(ウ) 放射化物の廃棄に係る記録
(i) 放射化物の発生状況及び年月日
(ii) 放射化物の種類及び数量
(iii) 放射化物の廃棄の年月日、方法及び場所
(iv) 放射化物の廃棄に従事する者の氏名
(v) 放射化物の廃棄の委託先の氏名若しくは名称
(エ) 教育及び訓練に関する記録
第9章 災害時、危険時の措置
(地震等の災害時における措置)
第14条 大規模自然災害(震度5強以上の地震、風水害による家屋全壊(住家流出又は1階天井までの浸水、台風及び竜巻等による家屋全壊の場合)が発生した場合には点検を行い、措置が必要な場合には報告を行うこと。
2 点検は、業務従事者若しくは業務従事責任者が行うこと。夜間や休日に上記の災害が起きた場合は、業務従事者と業務従事責任者が連絡を取り合い、そのどちらかが点検をおこなうこと。
3 点検項目は、第6条4項に準ずる。
4 点検により措置が必要な場合は、図2の連絡体制に従い報告すること。
図2
(火災時における措置)
第15条 院内で火災が発生した場合、発生場所が管理区域であるか、若しくは管理区域へ延焼の恐れがある場合は、原子力規制庁事故対処室に通報すること。
2 通報は、業務従事責任者がおこなう。夜間や休日などは業務従事責任者又は使用責任者がおこなう。
(危険時の措置)
第16条 放射線障害のおそれ又は放射線障害が発生した場合、主任者は、必要に応じた措置を行わなければならない。
2 緊急作業が必要な場合は、その場にいる者のうち放射性同位元素や放射線施設の構造を熟知した者からその作業者を主任者によって選任する。
第10章 情報提供
(情報提供)
第17条 放射線科部長は、放射線障害のおそれがある場合又は放射線障害が発生した場合、院長、放射線安全委員会、医療安全管理委員会に報告する。
2 報道機関、公衆等の対応は、院長の指示により院外対応統括者(事務局長)及び渉外広報担当者(総務課長)が行う。
3 詳細については、別に定める放射線障害発生時に関する報道機関への対応とする。
第11章 業務の改善
(業務の改善)
第18条 主任者は、病院内の放射線発生装置の使用・管理等に係る安全性を向上させるため「放射線治療業務に関する検討会」を定期的に開催する。詳細は放射線治療業務に関する検討会要綱に定める。
2 使用責任者は、必要に応じてこの結果を放射線安全委員会で報告しなければならない。
第12章 管理の状況の報告
(異常時の報告)
第19条 放射線健康管理責任者は、次の各号に掲げる事態が発生した場合、直ちに主任者に報告するとともに医療安全管理委員会と院長に報告しなければならない。
(1) 業務従事者について実効線量限度又は等価線量限度を超え、又は超えるおそれのある被ばくが発生した場合
(2) 前各号のほか放射線障害が発生し、又は発生するおそれのある場合
2 院長は、前項の通報を受けたときは、その旨を直ちに、その状況及びそれに対する措置を10日以内に、それぞれ原子力規制委員会に報告しなければならない。
(定期報告)
第20条 主任者は、毎年4月1日からその翌年の3月31日間での期間について次の各号に規定する放射線管理状況について放射線管理状況報告書を作成し、院長に報告しなければならない。
第13章 その他
(疑義)
第21条 この規程の条項の解釈に疑義を生じたときは、これを放射線安全委員会に付託するものとする。
(改正)
第22条 法令の改正又は行政指導等により、この規程を改正する必要があるときは、主任者、使用責任者、及び業務従事責任者で協議する。改正した結果は主任者から放射線安全委員会を通して院長へ報告する。また「放射線治療業務に関する検討会」にて周知徹底を図る。
附則
1 この規程は、令和元年8月20日から施行する。
2 この規程中の「放射性同位元素等による放射線障害の防止に関する法律」は、令和元年9月1日から「放射性同位元素等の規制に関する法律」と読みかえる。
附則(令和4年訓令第3号)
この規程は、令和4年8月20日から施行する。